マイクは、声や音などの空気の振動を電気信号に変える道具です。ナレーションや歌を録音するとき音の入口になるところなので重要な役割を持っています。
特にパソコンで録音する今の時代では、デジタルで録音できるので音が劣化せずに編集できるので、「どのようなマイク」で「どのように収録」するかが、完成の良し悪しに影響してくると考えていいでしょう。
そして、最近ではナレーションや歌で使うマイクは大きく2種類に分けることができます。この種類の違いは、音をどのように電気信号に変換するかの違いです。
録音したい音や声の特徴で、どのマイクを選ぶのかで完成が変わるので、マイクの特徴を知ってマイクを選びましょう。
マイクの種類
ダイナミックマイク
カラオケなどでよく見かけるタイプのマイクをダイナミックマイクといいます。
ダイナミックマイクは、ダイアフラムと呼ばれる振動板を音(空気の振動)が揺らして電磁誘導の原理で電気信号を発生させる構造になっています。振動板と繋がっているボイスコイルが振動することで、電気信号を得るので、ムービング・コイル型とも呼ばれています。
構造がスピーカーと同じで、構造が単純なので「頑丈なのが特徴」の1つになっています。
そして、マイクの口に近づけて歌ったり、声を出すの前提で設計されているので、音量や音圧、息がかかり湿気が振動板に当たることもありますが、音が出なくなったり音が変わったりすることがないので、その点でも、丈夫だということが分かります。
また、ダイナミックマイクのもう1つの特徴は、収録できるレンジ(音域)がそこまで広くありません。レンジが広くないと欠点のように感じるかもれませんが、声を録音する場合、聞こえる全ての音域(20Hz~20,000Hz)が必要かというと、そうでもないのです。
声の録音では、低域(50Hz)以上、高域(10,000Hz)以下が収録できれば十分です。次で紹介するコンデンサーマイクのように聞こえる音域を全て収録できても、編集で不要な帯域をカットするのなら、最初からダイナミックマイクで収録すれば良いこともあります。
ですから、ナレーションや歌はコンデンサーマイクで収録すれば良いのかと言えば、そうでもないのです。ノイズ処理を行うときに不要な低域や高域をカットすることは、よくあります。ノイズ処理を前提にマイク選びをするなら、ダイナミックマイクを選ぶのは間違いではないのです。
マイクの取り扱いに自信がない人や、始めてマイクを買うときなど、ダイナミックマイクを1つ持っておくと良いです。
ダイナミックマイクの特徴
- 頑丈である
- 湿気に強い
- 管理が簡単
- 収録できる周波数帯域が比較的狭い
SHURE SM58
とにかくダイナミックマイク選びで失敗したくない人は、この SHURE SM58 を買うといいいいでしょう。SM58 は1965年の発売からレコーディングやライブで使われている定番マイクです。
声の太さや温かさ、繊細さなどを引き出してくれて、高い音質と耐久性があります。
SHURE BETA58A
SHURE BETA58A と、SM58 の違いは、指向性がスーパーカーディオイドで側面からの音を遮断して、ネオジム磁石が採用されているので出力が高くなっています。
そして、低域と高域が拡張されてSM58よりも広い帯域の音を収録することができます。
コンデンサーマイク
コンデンサーマイクは、人が聞こえる音域をほぼ収録できたり、小さな音も収録できるのが特徴です。コンデンサーとは、電力を蓄積できる蓄電器と言うもので、直流電流を流してダイアフラムが動くと電荷の変化するので、その変化を電気信号にしています。
ダイナミックマイクのように、ダイアフラムがボイスコイルに接続していないので、感度がよく広い帯域を収録することができるのです。
そして、直流電流が必要なマイクなのでマイク本体に電気信号を大きくする増幅回路が内蔵されているので、ダイナミックマイクと比べて出力が大きいのも特徴です。
ダイアフラムのサイズや、マイク本体に増幅回路を内蔵しているので、周波数特性が音色がマイクによって違う特徴もあります。
マイクに直流電流が必要だと紹介しましたが、一般的にはファンタム電源と呼ばれる48Vの電気をマイクへ流します。電気を流すにはXLRケーブルと呼ばれるマイクケーブルが必要になります。
そして、ファンタム電源はマイクにケーブルを差してからオンにします。ファンタム電源を入れたまま、マイクのケーブルの抜き差しは絶対にしないでください。感電する事はないと思いますが、マイクが故障や壊れる可能性があります。
マイクにケーブルを差し込んでファンタム電源をオンして、ファンタム電源をオフにしてからケーブルを抜くことは、忘れないようにしてください。そして、マイク本体には真空管やコンデンサーなど、電気を蓄積する部品があるので、ファンタム電源をオフにしても放電するまで少し時間がかかるので、ファンタム電源をオフしてから、少し時間が経ってからケーブルを抜くのが安全です。
そして、コンデンサーマイクは繊細な構造なので急な衝撃に弱い特徴があります。頑丈な構造だと、小さな音が収録できないのです。また、湿気にも注意する必要があります。
冬に石油ファンヒーターなどをつけた部屋でコンデンサーマイクを使っていると、ダイアフラムに湿気で水分がついて音が出なくなったり、音が変わったりします。また、息がかかると湿気で同じようになります。乾燥すれば使えるようになりますが、収録の途中で音が出なくなったり、音が変わるトラブルにならないように、宅録でコンデンサーマイクを使う時は注意してください。そして、コンデンサーマイクを保管するときは、デシケーターと呼ばれる湿度が調整される保管庫に保管するようにしましょう。
特に声が大きい人や、息がたくさん出るような声を出したり歌を歌う人にコンデンサーマイクを使うときは注意が必要です。
コンデンサーマイクの特徴
- ファンタム電源(48V)が必要
- 出力が大きい
- 衝撃や湿度に弱い
- 小さな音でも録音できるので、防音や遮音の環境が必要
- 収録できる周波数帯域が広い
MXL 990
MXL990は、とにかく、頑丈なコンデンサーマイクです。また、手軽な価格なのでコンデンサーマイクを始めて買って使うにはおすすめのマイクです。専用ケースやマイクホルダーも付属しているので、コンデンサーマイクに不安がある人は、このマイクを買うといいです。
MXL 2003A
MXL 2003Aは、歌もの録音ではコスパが良いマイクです。ナレーションもいいですが、高音が綺麗に録音できるように調整されたマイクです。男性の声では問題ないですが、女性で声が高い人は少し調整して使うといいでしょう。
NEUMANN TLM102
アフレコやナレーション、歌のレコーディングでよく使われているメーカーNEUMANNは、プロの現場でも人気があるマイクのメーカーです。NEUMANN TLM102は、NEUMANN中で一番安いマイクですが癖がなく初心者から脱却するときに、おすすめのマイクです。
失敗しないマイク選びをするために
いい音で録音したいから気合を入れて、コンデンサーマイクを買っても使い方を間違って壊れてしまったら大変です。プロでも、全てコンデンサーマイクで録音してないので、高音質で録音したいから必ずコンデンサーマイクを使わなくてもいいのです。
それに、大事なのは、自分の声にあったマイクでよい音で録音することです。
マイク選びに失敗したら、いつまでもいい音で録音できません。そのために、マイク選びに迷いのであれば、定番のマイクを選ぶことも良いと思います。